桜の樹の下には

 だいぶ暖かくなり、もうすぐ桜の咲く時期となりました。
 毎年この時期になると、ある小説家の短編を思い出します。
梶井基次郎という、大正から昭和にかけて活躍(?)した小説家
なのですが、彼の短編集の中に「桜の樹の下には」という
短編があります。散文詩とも言われますが、私は彼の短編集が
とても好きで、十代のころから愛読しています。
 そんなわけで、この時期になると下記の文章が頭から離れず
桜を見るたびに、口ずさんでおります。


桜の樹の下には屍体(したい)が埋まっている!
これは信じていいことなんだよ。何故(なぜ)って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。しかしいま、やっとわかるときが来た。桜の樹の下には屍体が埋まっている。これは信じていいことだ。


酒井