お茶出しの時

こんにちは、杉山です。
私は、お客様が来所され、お茶の支度をしている時、
いつも思い出し笑いをしています。


それは、前の会社に勤めていたころの出来事です。
経理部は、本当に真面目で、気のいい人ばかりが集まったような部署でした。
仕事は、細かく根気がいり、膨大な量でした。
そのうえ、管理部に属するため、女の子はなにかと雑用を頼まれやすく、
目の回るような忙しさでした。


そんなある日、これまた気のいい部長に来客があり、部署の若い女の子がお茶を出しました。
お客様が帰った後、部長がその女の子に、「お客さんの茶卓にお茶が溜まっててさ、
お客さんが湯呑持ち上げて飲んでる時、ジャーってお茶が垂れたんだよ」と話ました。
女の子は「そうなんですかー」と相槌をうちました。


この部長と女の子が、本当に気のいい人だということを知らずにこの会話を聞いたら、
どちらも嫌味ですごく怖く感じられると思います。
経理部長への来客ですから、銀行関係の方でしょう。
経理畑一筋数十年の真面目な部長は、湯呑の底からありえない量のお茶が滴り落ちる光景に
目を見開いたことでしょう。しかし優しい部長は、それをとがめることなく、
お茶をだしてくれた女の子に、今後は注意してもらえればと話したのだと思います。
そして、女の子はさほど気にすることもなく受け取っただけなのです。


きっと、この話を聞いて怒りだす上司もいたと思います。
しかし、自分の仕事を集中してやりたくても、鳴り続ける電話をとり、
社員に文句を言われるようなお願いをしなくてはならなかったり、雑用を頼まれたりする日々の中、
嫌な顔ひとつせず(公の場では(笑))健気にがんばる社員なのです。
部長はそれを理解してくれていました。
少しくらいの不器用さがあっても、お茶出しの重要度が相対的に低くなっていたって、
私が社長ならこういう子を雇いたいなと思います。


そして私は、お客様の茶卓がジャブジャブになってる様子をハラハラしながら見つめた
真面目な部長を想像して、何度でも思い出し笑いしてしまうのです。


平野会計